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【相続トラブル】預金の無断引出し

預金の無断引出し イメージ

預金の無断引き出しのような相続財産の問題は、被相続人の生前に行われる場合と、被相続人の死後に行われる場合があり、そこにはさまざまな事情があります。

被相続人の生前に預金が引き出されていた場合

被相続人の生前に預金が引き出されていた場合では、以下のような理由が考えられます。

  • ・被相続人が預金を引き出していた or 被相続人から預金の引き出しを依頼されていた
  • ・被相続人から贈与された
  • ・被相続人の財産を使い込んでいた

被相続人が預金を引き出していた or 被相続人から預金の引き出しを依頼されていたケース

このようなケースの場合、 被相続人が亡くなる前まで病院や介護の費用として使うために、引き出していることが考えられます。
この場合は被相続人が必要なお金として使っているので相続財産の計算に含まれません。
また、医療や介護費用ではなく、被相続人が自身のために使ったお金なら相続財産となりません。
宝石や骨とう品などを買っていた場合でもその財産の評価額が相続財産に算定されるだけです。

被相続人から贈与されたケース

被相続人が亡くなる前に預金を引き出して生前贈与をした場合は、相続財産に含む場合とそうでない場合があります。

特別受益の持ち戻し・持ち戻し免除について

被相続人の生前に、被相続人から相続人に対し、一定の財産が与えられることがあります。
例えば、相続人が複数いた場合に、相続人の1人が結婚して家を建てる場合に、被相続人が多額の金銭を渡し援助することがあります。しかし、他の相続人は、被相続人から何の援助も受けたことがない時、援助を受けた相続人だけが大きな利益を受けている状況になります。
この時、相続人の1人に対する生前の多額の金銭援助を考慮せず、被相続人が残した財産についてのみ法定相続分を考えると、生前に何の援助も受けていない相続人と、援助を受けている相続人との間に不公平が生じます。
そこで、法律では、被相続人の生前に、生計の資本として生前贈与を受けた相続人がいた場合、相続分の一部がすでに渡されたものとして考慮し、遺贈や生前贈与を受けた相続人はその分相続分を減らすことが定められています。これを特別受益の持ち戻しと呼びます。
特別受益の持ち戻しについては、被相続人が、生前贈与が相続とは関係がない旨の意思表示をすることで、遺留分を侵害しない範囲で持ち戻しを行わせないことも可能です。これを持ち戻し免除の意思表示といいます。

被相続人の財産を使い込んでいたケース

被相続人の財産を使い込んでしまった場合、使い込んだお金は、相続財産になりません。
そのため、使い込んだ相続人からは、地方裁判所で損害賠償請求をすることで財産を取り戻す方法があります。

民法第703条 不当利得の返還義務

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

死亡直後の預金引き出しについて

被相続人の死後に預金が引き出されていたケースでは、以下のような理由が考えられます。

  • ・葬儀のために必要な場合
  • ・遺言で指定されていた場合
  • ・相続人の勝手な判断で、被相続人の預金を自分のものにしてしまった場合

被相続人がお亡くなりになったとき、その人の相続財産は相続人の共有財産になります。
そのため、遺産分割が終わるまで被相続人の預金を引き出すことは許されません。
被相続人が死亡したことが銀行に知られると預金口座は凍結され、預金の無断引き出しはできなくなります。

葬儀のために必要だったケース

被相続人の死亡直後に預金を引き出す必要性として考えられるのが葬儀に支払うためのお金です。
葬儀費用を誰がどう負担するのかは、法律で特に定められていません。
・喪主が実質的に負担する説
・相続人らがそれぞれ負担する説
・相続財産の負担として遺産から清算する説
など、学説は幾つかに分かれています。

しかし、葬儀費用は、死後に発生した支払のため遺産には含まれないと考えられ、一般的には、喪主が負担することが通常と考えられています。
ただし、相続人らで遺産分割の対象とすることに合意している場合には、遺産分割の対象とすることもできます。
もし、相続人らの間で遺産分割に関しての意見が合わず、紛争が生じている場合には、葬儀費用について最終的に誰がどのように負担するかという点について、民事訴訟へと発展することがあります。

相続税法上、葬儀費用に含まれるものと葬儀費用に含まれないものについては、下記のように定められています。

相続税法第13条-4 葬式費用

(1)葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用)
(2)葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用
(3)(1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの
(4)死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用

相続税法第13条-5 葬式費用でないもの

(1) 香典返戻費用
(2) 墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料
(3) 法会に要する費用
(4) 医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用

遺言で指定されていたケース

このような場合でも勝手に預金を引き出すことはできません。
銀行に遺言書やその他必要書類を提出して、正式に名義変更の手続をしてからでなければいけません。

口座のある銀行へ行き以下の書類を提出します。

  • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡まで連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 遺言書

※ このほかにも求められる書類があります。 
必要書類に関しまして詳しくは、口座のある銀行にお尋ねください。

被相続人の預金をもらってもいいと思い、引出してしまったケース

従来、預金に関しては、他の金銭などと同様に可分債権(分割が容易な債権)とされており、相続が始まると同時に分割されて、各共同相続人がその相続分に応じた権利を承継するものとして扱われてきました(最判昭和29年4月8日)。
つまり、預金は相続開始時点で共同相続人の相続分に応じて自動的に分割・帰属することになり、特別受益 を考慮した遺産分割を当然に行うことはできないということです。
しかし実務上は、当事者間で預金等についても遺産分割の対象に含める合意があれば、遺産分割の対象財産として預金の分割を行うことはできるとされていますが、従来の判例では預金は何ら分割手続を経ずして自動的に帰属割合が決まる性質を持っているということになっていました。
しかし、平成28年12月19日の最高裁の決定で、預金に関してはこの判例が変更されました。
預金について法定相続分相当額を算定することはできるけれど、遺言がなければ、預金も遺産分割の対象になり、預金契約を解約するためには、共同相続人全員による遺産分割協議や調停、審判を行わないと、各相続人に分割されないこととなりました。(先にも述べたとおり、平成28年の最高裁判決前も、共同相続人全員が合意すれば、預金も遺産分割の対象にできます。そのため、預金も含めて遺産分割協議をすることは行われていました。)
他の相続人に先だって、お金を引き出すことを認めてしまうと、残高がいくらなのか他の相続人にはわからず、共同相続人の間で公平性を確保できなくなるからです。

最判平成28年12月19日  民集70巻8号2121頁

最高裁は「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」と判示

たとえ法定相続分の範囲内だからといって、他の相続人に先立って、勝手に引き出すことはできず、預金を引き出した相続人に対して他の相続人は、相続人の共有財産として預金の返還を求めることができます。
もしくは、引き出してしまった後の預金の残高で他の相続人の法定相続分をまかなえる場合には,返還ではなく、引き出した相続人に対しては「これ以上分配する相続財産はない」という話になるかと思います。

死亡直前・直後の預金引き出しに関するトラブルは弁護士にご相談ください

相続をめぐるトラブルにはさまざまなものがありますが、相続人が被相続人の預金を無断で引き出していたというケースも多々あります。
相続をめぐるトラブルでお困りの方は、シーライト藤沢法律事務所にご相談ください。
初回相談は、50分無料となっておりますので、初回相談費用の心配もいりません。
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